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私の父は絵を描く人でした。といっても、あくまで個人の趣味の範囲でのことでしたが。すべて独学だと言うその技術は(私が言うのもなんですが)なかなかのものでした。身内の贔屓目を差し引いても、晩年の作品にはもしかするとそれなりの値が付いたのでは?と思うものもあります。(いや、やっぱ贔屓目かな……)
描くモチーフが花や風景というわかりやすいものであったせいか、知人や親せきの中には「絵を譲ってほしい」という人も現れました。父は描き上げた作品にはそれほど執着がなかったのか、乞われるままに絵を譲っていました。記録用にと、描き上げた作品はすべて写真に収めていたので、それでよかったのかもしれません。
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かなりの数の作品を描いていたけれど、譲る絵の数も相当でした。なので今家に残っている絵はそんなに多くありません。
それでも母は、保存に場所を取るからと、残りの作品もどんどん知人に譲ろうとしています。母いわく「ウチには写真が残ればそれでいいから」だそうで。記録用に撮った写真は、素人が使い捨てカメラで撮ったピンボケばかりなのですが。
絵は誰かに見てもらってこそ、だと思います。保存の環境には適さない押し入れでカビてしまうくらいなら、誰かの手に渡ったほうがいいのだと。そう言う気持ちもあります。描いた本人が「持っていっていいよ」というのなら、他の者が口を出すことじゃありません。でも、それを母が言うのはちょっとなんかどうなのっていうか。父の作品は、もうこれ以上増えることは無いのに。
これだけのクォリティと数があるなら、小さな画廊でもいい、いつか個展でもできないだろうか。もっと多くの人に父の絵を見てもらえないだろうかとぼんやり考えたりしてたんですが、どうも母には相談出来そうにありません。
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絵を描かない人の絵に対する感情っていうのは、描く人と大きく隔たりがあるんだなぁと感じています。1点ものの作品の、絵の具の色合いとか質感とか、そういうものはどうでもいいっていうかあまりよくわからないからなのか、「(ピンボケの)写真でいい」って、そういうものなのかな、と。描いた本人がそういうならまだわかるんだけど。
でも現実的に考えると、全部完璧に保存できるわけもなく。少しずつ誰かに譲るのが一番良いんだろうなぁ。「大事にしてほしい」と思うのは、私の、絵を描く者のエゴでしかないのかな。
hyacinthさん>
はじめまして。コメントありがとうございます。
絵は描くことも楽しいですが、誰かに何か伝えられるかもしれないっていうのが
素敵ですよね。
私の漫画も読んでくださってありがとうございます。絵や物語の中から、
キャラクターの感情を読み取ってくださるなんて光栄です。
父から絵について教わったことはほんの数回、あるかないかですが、
何らかの形で影響は受けていると思います。
なにより、絵(漫画)を描くことを止めないでいてくれましたからねぇ。
そういう環境にはとても感謝しています。
お気遣いありがとうございます。
まだまだ暑い日が続くようなので、hyacinthさんも熱中症などにはお気を付けくださいね。
はじめまして。
私も絵が好きで小さいころから描いていました。といっても、ノートに、とか画用紙にとかですが・・・
自分の描いた絵が私の元をはなれて、もらってくれた人の下で癒しや和みをもたらすお仕事をしてくれるっていいなぁと思いました。
佐木田先生の描かれる漫画は登場人物の表情や性描写のなかにかすかな心の機微みたいのが豊かに描かれていて読むたびに心をゆさぶられます。
お父様の傍らで先生の表現の業が培われたのでしょうか。先生の世界に触れられること、お父様にも感謝です。
先生の活動が祝されますように。暑い日が続きますが、どうぞお体ご自愛ください。
青木のはらさん>
おひさしぶりです~。
PC修理中でしたか。まぁ携帯もありますからねぇ。いいんじゃないでしょうか。
毎日パソコンでやりとりしてる人などは、数時間でも繋がらないと落ち着かないと
聞きますが、なければ他の方法で補うことも必要かなぁと思います。
絵に限らず、価値観は人それぞれですよね。
それはわかるので「大事にしてよ」なんて言えないのですが、
やはりモノが絵になると、ついつい感情が抑えられない時があります。
自分の絵じゃなくても、ぞんざいな扱いを受けてるのを見ると心が痛みます。
私も興味がないものにはほんっとうに無関心なので、
その辺りもよくわかるんですけどね。
お久しぶりです。
価値観てほんとに人それぞれですね。
自分の描いたものを大事にしてほしいっていう気持ち、とてもよくわかります。
でも、興味のないものにさほど気持ちが動かないことも(自分でもおおいに思い当たるので)仕方がないのかな。
たぶん、価値自体も流動的に変化していくのだと思うんですよ。
今日もてはやされても来週はわからない、とか、10年前は誰も知らなかったのに今は知らない人がいないとか。
個人の中でも基準が変わったりして。
でも、手にしたものは大事にしたいですよね。
ところで、PC、修理のため一ヶ月半手元になかったのですが、もっと困るかしらと思っていたのにそうでもなかったんです。
デジタル依存していないことを喜ぶべきか、技術に乗遅れていることを憂うべきか?