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TLというジャンルは、自分で描くようになるまでほとんど知りませんでした。なのでこのTLジャンルの描き方は、多くの他の作家さんの作品から学ばせていただきました。
自分には無理だと思っていた恋愛漫画も描いてみると結構楽しくて、幸せな執筆活動を続けさせていただいてます。編集さんには様々なご意見を頂いては方向を修正することも何度かありましたが、それはお仕事で描くうえで必要な調整だと思い、納得して受け入れてきました。
しかしある一時期、どうしてもしんどいことがありました。
カラー扉やコミックスカバーのイラストで、ヒロインの表情を変えてくれと言われたことです。何を描いても「もっと眉毛を下げて、困り顔で、頬を赤らめて」と同じリテイクが来るのです。切なげな表情のほうが売れるからという意図だと思うのですが、全部それというのはどうなんだろうかと。切ない表情ならまだいいのですが、私はTLジャンルのヒロインを困り顔にするのはあまり好きではありません。
TLにおいて、「ヒーローから強引に迫られて戸惑ってしまうヒロイン」は王道のシチュエーションです。それを絵にすると「困り顔で頬を赤らめた」ヒロインになるのだと思います。困ってはいるけれどまんざらでもないという心情があるとはいえ、性行為のあるTLにおいて私はヒロインを困らせすぎるような表現はしたくないなぁと思うわけです。
私のTL漫画は基本すべてハッピーエンドです。個人的には悲恋物語も好きな方ですけれど、自分で描いて読んでいただきたいのは、最後に「あぁよかった」と思ってもらえるような物語です。なのでヒロインには幸せであって欲しいのです。過度に困ってほしくない。つらい目にあってるような表情は描きたくない。
切ない顔とただの困り顔を描き分け出来ない自分にも問題があるのですけれども。本当はね、表紙の絵では幸せそうなカップルを描きたいんですよ。幸せそう過ぎると見た人に安心感が生まれて、「どうなるんだろう?」という先の展開への期待感が薄れるかもしれないですが。
漫画は基本、いかにしてページをめくらせるか、次の展開を期待させるかが大事だと思ってます。その玄関となる絵にも、そういう期待感は必要なんだと。だから「なんで困ってるの?」と感じさせる、何かフックになるような「困り顔」はある意味王道の表紙絵なのかもしれないです。
それでも。
ヒロインが幸せであることがわかりつつも次に展開が気になる、不安にならない、ほっこりした表紙絵が描きたいです。
ちなみに最新のカラー扉(まだ未発表)は、かなりツッコミ所のある良い絵が描けたと思っていますのでご期待ください。